海からの潮風が吹き抜ける洲本市五色町都志(つし)の米山地区。「潮風をたっぷり受けるこの地域のタマネギは、昔からおいしいと言われているんですよ」と話すのは、この場所で「うしろ農園」を営む後さん夫妻。借地を含む約2町(約6000坪)の土地でタマネギやホワイトコーンなどを栽培しています。
「心を込めて育てた私たちの野菜で、少しでも食卓が豊かになれば」と話すお二人に、就農の経緯や五色町での暮らしなどを伺いました。
農業を営んでいた祖父母の土地で、竜佑さんが本格的に農業を始めたのは2012年。洲本市五色町都志で育ち、大学進学で神戸へ。親戚などから「農業を仕事にしてみては」とアドバイスを受け、大学卒業と同時にUターンで故郷に戻ってきました。
竜佑さん:当時は就職氷河期と呼ばれた時期でした。就職活動がうまく進められなかった中で、「とにかく一度やってみようか」という気持ちで就農を決めました。祖父母が農業に取り組んでいる様子をずっとそばで見て育ってきましたが、農業のことは何も分かっていなかったので、洲本で約1年間の研修を受け、そこから祖父母の土地で農業を始めました。当初はレタスを栽培していましたが、これがいい価格で取引できて(笑)。「これなら続けていけそうだ」という手応えを得ることができました。
一方、神戸出身の芽生さんは、自然に囲まれながら農業などに従事したいと考え、大学の農学部に進学。JA淡路日の出への就職を機に、淡路島へ移り住みました。
芽生さん:JAへの就職当初は金融窓口を担当していましたが、その後、農薬の試験に関わるなど、農家の方々と近い距離で取り組める業務を担当するように。30代を前に「新たな挑戦がしたい」と考えた結果、洲本市地域おこし協力隊の隊員に応募。洲本に移住して農業に取り組みながら、自分の畑での就農を希望する方に農業体験をしてもらうといった支援を積極的に行ってきました。夫と出会ったのはその頃ですね。結婚後は夫と一緒に農業に従事するようになりました。
現在は二女一男に恵まれ、「うしろ農園」の近くにある賃貸物件で暮らしている後さん夫妻。竜佑さんは生まれ育った場所ですが、芽生さんはどのような場所だと感じているのでしょうか。
芽生さん:もともと自然の中で農業に勤しみたいと思っていたので、海も山も川もあるこの地区は自然に囲まれているという点では申し分ないです。台風が来た時の備えなど大変な時もありますが、農業はやっぱり楽しいですね。子育ての面でも、近くに「五色すこやか子育てセンター」があり、一番下の子はまだ就園前なので、よく通っていますよ。上の二人は保育園に預けていますが、それもすぐそば。同じ地区に住むママ友もずいぶん増えました。
その一方で、都会暮らしに慣れた人にとっては、毎日の買い物などは多少不便を感じる部分があるかもしれないと言います。
芽生さん:大きな商業施設となると、洲本の市街地などに足を運ぶ必要があります。私たちは収穫物を市街地のお店へ卸す時にまとめて買い物をすることが多く、そこまで不便さは感じていませんが、生協の個人宅配も利用しています。また、地元にかかりつけ医はいますが、大きな病院は市街地にあるので、救急時や通院となると時間がかかってしまうのは仕方ない部分ですね。
竜佑さん:それでも、自宅の近くには「高田屋嘉兵衛公園 ウェルネスパーク五色」があり、子どもたちは思う存分遊ぶことができます。日帰り入浴施設もあるので、私は農作業のリフレッシュを兼ねて、年間パスを購入するほど利用しています(笑)。ここでは都会のような利便性は感じられないかもしれませんが、家族が自然に囲まれて、のびのびと過ごせる環境はあります。妻の実家がある神戸まで、車なら約1時間のロケーションも便利ですよ。
2021年に、それまでメインだったレタスからタマネギの栽培にシフト。11月から新タマネギ、6月から中生(なかて)・晩生(おくて)タマネギを出荷しており、7〜8月にはタマネギ畑の土づくりにもつながるホワイトコーンも収穫。米の栽培も行っています。就農して10年以上となった竜佑さんは、これからは農家としてのオリジナリティを出していくことが大切だと話します。
竜佑さん:メインをタマネギの栽培にシフトしたのは、淡路島産タマネギというブランド力はもちろん、収穫量や作業効率などを考えてのことです。できるだけ辛みを抑え、甘くおいしいタマネギになるよう、土や肥料などにもこだわっています。ホワイトコーンは糖度21.7度を達成。これも甘くておいしいですよ。就農当初と比べて知識も経験もありますし、この10年で農家の方々や一緒においしい野菜を作ることに取り組んでくれる方とのつながりも広がりました。今も新しい肥料を使っての栽培など、年単位でのトライ&エラーを繰り返しながら、収穫物の品質を上げることに力を入れています。
2021年からはオンラインでの直販も開始。SNSを使い、野菜の生育状況や畑仕事の様子も配信しています。
竜佑さん:同じ淡路島産タマネギでも、場所や栽培方法で味は変わります。SNSなどを通して「少しでもおいしく」という想いを持って農業に取り組んでいることが消費者の方々に伝われば、「うしろ農園」のオリジナリティがゆくゆくは生まれてくるのかなと思っています。また、妻はタマネギの保存方法やレシピも発信してくれています。「おいしかった!」といった返信をもらったり、わざわざインターネットで調べて「うしろ農園」まで足を運んでくださるお客様も増えてきました。夫婦ともども励みになっています。
今回の取材では、芽生さんからタマネギを使ったレシピを教えてもらいました。「手軽で簡単。しかも野菜、魚、肉など、何にでも合うんですよ」という逸品。新タマネギを使うとさらにとろみが加わり、これまた美味!
(材料)
タマネギ 1個
だし醤油 200ml
酢 200ml(味がまろやかな酢がおすすめ!)
砂糖 大さじ1〜3
オリーブオイル 少々
(作り方)
1 おろし金などでタマネギをおろし、おろしにくい端の部分などは約1cm角の大きさでカット
※ブレンダーやフードプロセッサーなどでもOK
2 だし醤油、酢、砂糖を加えて攪拌
3 仕上げにオリーブオイルを好みの量で垂らして完成!
お子さまの子育てに奔走しながら、「毎日忙しいながらも、にぎやかで楽しい日々が過ごせています(笑)」と今日も農作業に取り組む二人。最後はこれから移住や就農を考える方へのメッセージをお願いしました。
芽生さん:「うしろ農園」では移住して就農を考えている方の農業体験は大歓迎です。洲本市地域おこし協力隊での経験もありますので、実際に農家の暮らしがどのようなものか、どんな風に仕事をして収入を得るのか、具体的な相談にも乗れると思います。興味のある方はぜひお越しください!
竜佑さん:移住や就農は新しい環境でのチャレンジになるはずです。そこで大切なのは‟熱意”。「おいしい野菜を届けたい!」「将来はこんな暮らしを叶えたい!」など、一人ひとりの夢や目標に向けて前に進んでいくためには、多少の苦労や挫折に負けない‟熱意”が必要です。私たちもみなさんの移住や就農をできる限りサポートして、応援させてもらいます。一緒に頑張っていきましょう!
農業を営んでいた祖父母の田畑を受け継ぎ、竜佑さんと芽生さんがタマネギやホワイトコーンを栽培。農薬を極力抑え、土づくりにも取り組む竜佑さんのタマネギは「ひょうご安心ブランド」の認証も受けている。現地で直販を行っており、公式オンラインショップからも購入できる。
物件名 | うしろ農園 |
住所 | 洲本市五色町都志米山490 |
交通 | 神戸淡路鳴門自動車道北淡ICから約18km |
営業時間 | 10〜17時 |
定休日 | 日曜、祝日 |
駐車場 | あり |
公式サイト | https://ushironion.theshop.jp |
公式SNS | Instagram:https://www.instagram.com/ushironouen_awaji/ Facebook:https://www.facebook.com/ushironouen/ Twitter:https://twitter.com/ushironouen |