冬の入り口に差し掛かった11月下旬、淡路島でのスポーツ振興やスポーツを通じた地域活性化についてのお話を伺うため、淡路島のサッカークラブ「FC.AWJ(エフシー.エーダブリュージェイ)」の事務所があるアルチザンスクエアに向かいました。今回取材に応じてくださったのは、同団体のCOO(最高執行責任者)の三上昴さん。
ーまず初めに、淡路島を拠点にした理由を教えていただけますか?
三上さん:FC.AWJの代表の片山が京都出身で、子供のころサッカーの試合でよく淡路島に来ていた。その時の楽しかった思い出があったこと、「アスパ五色(https://www.city.sumoto.lg.jp/site/aspagoshiki/)」という設備の整ったグラウンドが洲本市五色町にあることから、淡路島を拠点に活動しています。淡路島は陸路で四国や関西方面に遠征に行ける地の利も魅力ですね。あとは、観光地としての魅力がある淡路島で試合を開催すれば、「楽しそうだから行ってみたいな!」って人が多いと思います。FC.AWJが人気になって、野球の沖縄キャンプみたいな集客力がつけば、それこそスポーツツーリズムとしての可能性も広がると思うんです。
ーFC.AWJの選手はほとんどが移住者だと思うのですが、移住した選手の生活はどのような感じなのか教えていただけますか?
三上さん:選手たちは基本的に午前中練習、午後から地元の提携企業での就労、夜はサッカー教室で子供たちにサッカーを教えています。社会人経験がない選手がほとんどなので、企業とのマッチングが大変ですね。午後しか働けないのに加え、試合のために休まなければならない。不利なことだらけですが、20代前半の選手が多いので、企業としては一番来て欲しい働き盛りの年齢ということで、なんとか就職先は確保出来ています。選手にとっても地元との繋がりができ、社会人経験も積めるのでセカンドキャリアを考えれば、いい機会が提供出来ていると思います。
ー知らない土地に移住してきて寂しいなとか、そういう悩みはなさそうですか?
三上さん:サッカースクールで地元の子供たちと触れ合えたりするので、寂しい様子はなさそう。子供たちに直接サッカーを教えることで、子供たちの憧れの存在になることもできるし、それは選手にとってすごく励みになることだと思います。
ー地元企業や自治体などと連携し、スポーツを通じた活動をされているようですが、具体的な取り組みについて教えていただけますか?
三上さん:地元向けのサッカー教室を主催していて、現在80人くらいの生徒がいます。他にも、淡路島に拠点を置く企業が持っているフットサルコートをお借りして社員の子供たち向けのサッカー教室も行っています。サッカー以外にも、高齢者施設での運動教室や、地域の保育所と連携し「子どもを対象とした運動能力向上教室」と「保育士を対象とした勉強会」を実施、「すもとっ子親子ふれあい運動プログラム」という未就学児を対象にした運動イベントなども企画実行しています。
三上さん:いろいろ開催してきたイベントの中でも一番集客があったのが、「かけっこ教室」でした。サッカー教室だと男の子がメインになってしまうのですが、「かけっこ」だと女の子も参加できるからか、たくさんの親子が参加してくれました。親子で楽しめるイベントの需要が高いと感じましたね。
ーサッカー以外のことも教えているのですね!
三上さん:サッカー選手は運動のプロなので、島民の健康づくりという面でも地域に貢献できると思うんです。あとは、選手の顔を知ってもらい、チームのファンを増やすことが大事だと思っているので、積極的に地域に出て活動しています。
ーなんだか、選挙活動みたいです。
三上さん:サッカーチームって試合に勝って強くなったからと言って知名度が上がる訳じゃない。例えば「日本一のサッカーチームを知っていますか?」と聞いて答えられる人は少ないと思います。島民に自分たちのことを知ってもらって応援してもらう。地元で応援してもらうことで選手たちはやる気が出て、もっと頑張ろうと思う。だから強くなれるのだと思うんです。そのためにまずは、地元から愛されるチームづくりをしたいと思っています。淡路島の人は阪神ファンの人が多いですよね。今年は優勝したので、すごく盛り上がっていたし、みんな優勝したことも知っている。それくらい愛されるチームになりたい。
三上さん:淡路島って「島」なのがいいですよね!でも、淡路島の人って「淡路は〜」って「島」を付けないことが多い気がします。一方、淡路島の近くにある小豆島の人は「小豆島は〜」って言っている。僕は沖縄に住んでいたことがあるのですが、沖縄にも「島人(しまんちゅ)」とか「島野菜」とかやたらと島と付くものが多い。だから、淡路島の人に「島」であることにもっとプライドを持って欲しいなと勝手に思っている。FC.AWJも「町クラブ」じゃなくて、「島クラブ」で打ち出して行きたいなと思っています。
「島の宴」というFC.AWJ主催のイベントで島内の6高校を集めて試合をしたんです。その時に驚いたのは、島の高校生たちが他校の子とほとんどコミュニケーションをとっていなかったことでした。コミュケーションに慣れていないというか、幼い印象を受けました。高校生たちに「普段どこに遊びに行くの?」と聞いたら、地元のショッピングセンターに行くくらいしか選択肢がないようで、地元のことをあまり知らないし、楽しんでいないような感じでした。島には子供たちを学校や塾に送迎する文化があるようで、基本的に車生活。人同士の出会いが少ないのかなと感じました。子供たちには、島に楽しいことあるって思って欲しい。もっと他校の子と交流して友達作ったり、恋愛したり、楽しい青春を送って欲しい。青春時代が楽しくなかったら、郷土愛も育まれないと思うんですよね。だから、子供たちが楽しめる場所を作って、自分たちの故郷に誇りを持ってもらいたいなと思います。青春時代が楽しくなければ、故郷に帰ってきたいとも思わないでしょう。
ー確かに。FC.AWJ代表の片山さんも淡路島で楽しい思い出があったから、ここを拠点に選んだ訳ですし!
編集後記:運動オンチな私。スポーツには全く興味がなくここまで生きてきたのですが、そんな私でも知っていたFC.AWJの活動の数々。スポーツに興味がない人にも楽しんでもらえるよう、FC.AWJ主催のイベントには、島で話題のキッチンカーが出店したり、地元のダンスチームがゲスト出演したり、運動能力が高くない人でも気軽に参加できるアクティビティーが用意されていたりと、島民のQuality of Life(生活の質)を向上させる仕掛けがいっぱい用意されています。なぜこんな素敵なイベントが島内各所で開催されているのだろう?とずっと疑問に思っていたのですが、COO三上さんはじめ、スタッフの方々の営業力の賜物なのだと分かりました。そして、それに賛同してくださる地元企業の皆様にもこの場を借りて感謝したいと思いました。
FC.AWJ(エフシー.エーダブリュージェイ)
https://fcawj.com/