日常づかいの朝ごはん屋さん|ふじさん

公開日 : 2024.02.14

 2023年の年末、洲本のメインストリートである堀端筋に、朝ごはん屋「赤富士」がオープンしました。洲本の市街地エリアで朝ごはんが食べられる貴重な場所が出来たということで、淡路島の新しいもの好きな人たちの間でも話題騒然です。今回はそんなお店の店主である「ふじさん」に洲本でお店を開くまでのいきさつをお伺いしました。

【プロフィール】
ふじさん

朝から晩まで働くことに疑問を感じた東京時代

ー移住先を淡路島に決めた理由があれば教えていただけますか?

ふじさん特に理由はなくて、直感で選びました(笑)。あえて理由をあげるとすると、僕と奥さん、二人ともが知らない土地に行きたい。という気持ちがあったくらい。

 淡路島に来る前は神奈川県に住んでいて、飲食店を軸に色々な事業を展開する会社で働いていたというふじさん。当時は、恵比寿の飲食店の立ち上げを担当していました。朝の5時くらいに家を出て、夜の10時くらいに帰宅するという仕事中心の暮らしで、新婚だったにも関わらず、奥さんとの生活はすれ違い気味。そんなある日、家族会議中に「私たちはなんのために働いているのだろう?」という話になった。奥さんはリモートワークが出来る職種だったこともあり「もっと家族の時間を大切に出来る暮らしを淡路島に移住して一から作りあげていこう」という結論になりました。そんなこんなで、ふじさん一家の移住計画がスタートしたのです。

 家探しのため情報収集を始めたふじさん。島を回ってみて一番ピンと来たのは洲本の市街地エリアでした。理由を聞くと、

「洲本の街中に残るレトロな雰囲気や、人のよさに惹かれました」

とのこと。ですが、ネットで閲覧できる賃貸物件には限りがあることが分かりました(※1)なので、洲本の街を食べ歩きしながら家探しをすることに。そこで紹介いただいた家がたまたま店舗付き住宅でした。遅かれ早かれ淡路島で自分の店をオープンしたいと思っていたふじさんは、移住と同時に開業に向けて動くことにしました。移住の理由でもある家族の時間を大切に、、、を前提に考えると、朝ごはん〜ランチタイムで営業を終え夜営業はしない「朝ごはん屋」がいいのではと考えました。淡路島に初めて来たときに朝ご飯屋さんがなかったので、じゃあ作ってしまおうと、オープンに向けて準備を始め、今に至ったそう。

(※1)淡路島の人は、自分の物件を不動産サイトに載せるのを嫌がる方もいます。その理由は様々ですが「お金に困っている人と思われる」という理由も。なので、不動産市場に乗っていないけど、空物件はたくさんあったりします。

堀端筋にあるふじさんの朝ごはん屋「赤富士」

どん底から救ってくれたライブ配信

ー料理を仕事にしようと思ったきっかけがあれば教えてください。

ふじさん10代の時に「みんな」が幸せになれる空間(飲食店)を作りたいと思ったんです。それで「みんな」って誰?ってなった時に「世界中の人だ!」ってなった。その後、ワーキングホリデー・ビザでカナダに行って、英語を勉強しながら現地の飲食店で働きました。海外に行って衝撃的だったのは、海外にいる人は「自分はどう思うか」をすごく大事にしているということ。日本人って「他人にどう思われるか」をすごく気にしている。でも、海外にはそういう考え方の人はあまりいなかった。帰国後、また海外に行きたくなって今度はアイルランドに行ったんです。カナダでは日本人の友達が多かったけど、アイルランドには日本人はほとんどいなくて、代わりにブラジル人の留学生がいっぱいいました。交友関係がブラジル人一色になったので、自然とポルトガル語が習得できたんですよ。それはとてもラッキーでした。

 今度は仕事でマレーシアに行くことになったふじさん。現地では高級寿司店で勤務していました。この仕事は、お店を一歩出ると高級車で帰っていくようなお金持ちとも、お店の中ではフラットに会話出来るのが楽しかったとのこと。そんな順風満帆な時、コロナの猛威が世界を襲いました。マレーシアでは厳しいロックダウンとなり、飲食店は軒並み営業自粛状態。マレーシアに移住するつもりだったふじさんも帰国せざるを得ない状況になり、そのまま無職となりました。そんなどん底のふじさんを支えてくれたのが「ライブ配信サービス」でした。

「友達から、これからはライブ配信が流行る!って聞いて何もわからないまま夢中でやっていたら、いつの間にかライブ配信一本で食っていけるようになっていました。」

 ライブ配信でも生きてはいけるけど、収入としては不安定だったと当時のことを振り返るふじさん。コロナ禍も落ち着いてきたころ、飲食の仕事に復帰を果たします。

旅する料理人が選んだ新拠点は、淡路島の洲本

ーふじって名前の由来教えていただけますか?

ふじさん「ふじ」は実はイングリッシュネームなんですよ。海外に行くときの呼び名を友達に考えてもらって、最終候補が「ふじ」と「すし太郎」になって「すし太郎」はないなー!ってなった(笑)ライブ配信でも、ライバー名「ふじ」で配信しています。ライブ配信の視聴者さんには苦しい時いろいろ助けてもらっていて、家や仕事を紹介してもらったこともありましたし、今でも交流があります。そして実は、奥さんはライブ配信のときの視聴者なんです。(!!!)

 お店の名前の「赤富士」もここから取っていて、縁起良さそうな名前にしました。お店は特別な空間というよりかは、日常づかいしてもらえるようにしたいです。毎日のこだわりはインスタグラムに書いているのでぜひ読んでみてください。(※2)

 先日、お店で使っている洲本市鮎原地区のブランド米(千の光)を作っている営農組合の農家さんがお店に来てくれて、「米ええやん、美味しいやんっ!」と言ってもらえたのが嬉しかったですね。こちらの農家さんのところにはお手伝いに行ったりしながら交流を深めています。これからも積極的に生産者さんと繋がって、出来るだけ島の素材を使った定食を提供できたらと思っています。

毎日食べても飽きない!白ごはん、味噌汁、玉子焼き、漬物、季節のサラダがセットになった「銀シャリ定食」
釜炊きの白ごはんが美味!

(※2)ふじさんの毎日のこだわり(赤富士のinstagramより)

毎日精米し、出汁を引く
野菜を育て。朝から台所に立つ
背伸びせず仕事も家族も大切に!

 そして僕自身はやっぱり旅が大好きなので、たまには旅をして新しいことを吸収し、その話をお店のお客さんと共有できたらうれしいなと思っています。(FIN)

編集後記:飲食経験が豊富なふじさん。実は自分のお店を作るのは今回が初めてだそうで、「先日、新しい冷蔵庫が欲しくて買いに行ったんですけど、奥さんに、高すぎるからやめときっ!とダメ出しをされたので、いま家族会議中です。」と恥ずかしそうに教えてくれました。勢いで突き進むふじさんと、しっかり者の奥さん。すてきな関係に微笑ましくなりました。観光の島なので非日常な雰囲気を味わえる飲食店は多いですが、ベーシックで美味しい普段使いのお店ってなかなかなかった。しかも私自身「白米」が大好きなので、淡路産の美味しい米が食べられるというのがすごくポイントが高いなあと感じました。どこに旅に行ってもやっぱり家に帰ってくると「お米とお味噌汁」が食べたくなりますよね。「赤富士」は、いつでも美味しいごはんを用意して待ってくれているHOMEのようなお店だなと感じました。ぜひ行ってみてください!

淡路島のごはん屋「赤富士」

インスタグラム:https://www.instagram.com/breakfast.fuji/

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