いつでもお母さんたちに寄り添う助産院|岡垣裕美さん

公開日 : 2023.12.25

 洲本市役所で母子保健(母と子の健康を保持・増進させることを目的とした活動、具体的には母子手帳の交付や母と子の健康指導など)の担当を経たのち、同市でお産は取り扱わず産後ケアや子育て支援に特化した助産院を開業された岡垣裕美さんに、淡路島でのお産や子育て事情についてお伺いしました。

【プロフィール】
岡垣裕美さん(49歳)
※年齢は取材時点(2023年11月)

市役所で対応できない部分をサポートしたい

ーまず初めに産後ケアや子育て支援に特化した助産院を開業しようと思った経緯を教えていただけますか?

岡垣さん市役所の母子健康事業を通して地域の方と関わりを持つ仕事はとてもやり甲斐があったんです。その反面、17時以降や土日などの勤務時間外に対応できないことに不甲斐なさを感じていました。むしろ、勤務時間外こそサポートが必要だったりする。お母さんたちがしんどい思いをしているのを知っているのに行ってあげられないのが辛かった。なので、自分でそういう場所を作ろうと思ったんです。

華やかな印象のエントランス

ーお産を取り扱わないのには理由があるんですか?

岡垣さん現在、島民のほとんどは兵庫県立淡路医療センター(https://www.awajimc.jp/)で出産しています。昨年開業した淡路市のさくら助産院でもお産ができるようになりました。でも淡路島で生まれる赤ちゃんは年におおよそ600人(3市合計)くらい。出産が少ない現代であるからこそ、安全に医療のあるもとで出産してほしい。大切なのは、産む場所ではなく、産んだ後のケアとそこから続く育児の時間だと思い、そこに特化したかった。なので、困っているお母さんの力になれる、産後ケアや子育て支援に特化した施設にしたんです。産後ケア事業は淡路島3市とも力を入れています。というのも、産後うつのような症状に苦しむ人が多いから。私は何人ものお母さんに接しているので、妊娠期から産後にかけてしんどくなりそうな人は母子手帳交付の段階で分かったりするんです。なので、市役所勤務時代には、そのような方には助産師訪問を積極的に行うなどして注意深く経過観察を行ったりしていました。

困っている女性だけじゃなく、誰でも来れる場所を目指して

ー産後ケアや子育て支援というのがいまいちピンと来なくて。どんな人だったらMOM助産院に行ってもいいんですか?

岡垣さんそういう人が多いと思うんです。なので、パンの販売のイベントをしたりして、誰でも気軽に来てもらえるような工夫をしています。あと具体的なサポートとしては、お母さんと赤ちゃんの体調に合わせオーダーメイドでつくる産後ケア(通所してケアを受ける、施設に宿泊してケアを受ける、自宅に訪問してもらいケアを受けるなどさまざまな形態から選択可)や、母乳外来、子育てのアドバイス、0か月~3歳を迎えるまでのお子様の一時預かりなどをしています。その他にもお母さんにゆっくりしてもらうために、エステ、整体、ハーブ蒸しなど、それぞれ専門の先生をお呼びして実施しています。妊娠前からも頼って欲しいので、不妊治療などの妊活相談もお受けしています。

お母さんがゆっくりくつろげる個室
専門家と提携した「癒し」のサービス

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洲本市の産後ケア事業
https://www.city.sumoto.lg.jp/soshiki/28/17204.html
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岡垣さん洲本市も産後ケア事業に予算をつけてくれているのですが、お母さん自身が遠慮して使ってくれない、そもそも産後ケア事業に補助があること自体、知られていないという悩みもあります。お母さんになる人は真面目な人が多く、私が使っていいのだろうか、育児くらいやれなければならない。しんどいのは、子どものためだから我慢しなくてはならない。と思うようです。でも、お母さんたちはみんな頑張っています!なので、遠慮することなくどんどん私たちを頼って欲しいと思っています。

助産院らしからぬ外見は、実家に帰って来るような気持ちで来てほしいとの願いから

ー私は移住者ということもあり、身近に気軽に頼れる人がいなくて正直孤独な子育てでした。産後ケアのお知らせは市役所からあったのでしょうが、子育てに必死でそれどころじゃなかった。こんな素敵なサービスが用意されていること、早く知りたかったです!!

岡垣さんそうなんです。子育てで孤立しているのは島外からのお嫁さんが多い印象です。だからそんな方に声をかけて、ランチ会を開いたりもしています。また一方、親と子育ての方針が違うから預けたくないと思っている方もいる。なので、最新の子育てについての知識を持っている第三者の介入が必要だと感じています。あと、メディアも良くないですよね。子育てが辛いと報道しすぎている。辛いこともあるけど楽しいこともある、そういう部分も伝えていけたらと思います。

医者じゃなくても新しい命に関わる仕事が出来る

ー最後に助産師になりたいと思ったきっかけがあれば教えて欲しいです。

岡垣さん中学3年生の時の授業で助産師さんから出産についてのお話を聞いたんです。その時まで赤ちゃんを取り上げるのは医者の仕事だと思っていたのですが、取り上げているのが助産師だと知って衝撃を受けたんです。その時から助産師になりたいと思うようになり、いろいろ調べました。そして、助産師になってから私も同じように学校の授業で「いのちのおはなし」をお伝えしています。

嬉しいことに、私の授業を聞いてくれて助産師になってくれた子がいるんですよ。そしてその子は今、私のお手伝いに来てくれています。

ーすごい。バトンが繋がっていますね!

授業の様子

編集後記:以前、子育ての取材でお伺いした藤本さん(https://sumo-navi.com/special/1308/)から紹介を受けて初めて知ったMOM助産院。藤本さんのお話を聞いてぜひたくさんの人に知ってもらいたいと思い取材を申し込んだところ、快く引き受けてくださりました。私自身4歳児を育てている母親かつ、移住者ということで気軽に頼れる知り合いも少ない中、孤独な子育てに奮闘中。もっと早く知りたかった!という思いが取材中に何度も溢れて来ました。取材中に、子供の健康診断で知り合いのママさんがいなくて心細かったこと、子育てセンターに興味があるけど他のママさんと馴染めるか不安などの経験談を話すと「みんなそうだから」「あなただけじゃない」と共感してくれて、「あなたは頑張っている」と励ましの言葉をもらったときは思わず泣きそうになりました。もし悩んでいる人がいれば、MOM助産院を尋ねてみて欲しい、そう心から思った取材でした。

MOM助産院
https://mom-awaji.jp/

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