洲本市×SDGs|洲本の歴史から生まれた『菜の花エコプロジェクト』

公開日 : 2023.06.19

近年、SDGsは社会全体で広く知られるようになり、地域においてSDGsの視点を取り入れ、地域の特性・強みを活かした事業への関心が高まっています。

今回は、SDGsの取組みの一環として、洲本市五色町都志にある『ウェルネスパーク五色』を拠点とし、『菜の花エコプロジェクト』に取り組んでおられる細川さん(洲本市農政課)にお話を伺いました。

『菜の花エコプロジェクト』とその歩み

洲本市大野地区の菜の花畑
『菜の花エコプロジェクト』事業スキーム

『SDGs』とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のこと。

17の大きな目標とその目標を達成するための具体的な169のターゲットで構成されており、一度は耳にしたことのある言葉ではないでしょうか。

洲本市農政課とウェルネスパーク五色(洲本市五色町都志/宿泊・キャンプ・体験等が楽しめる複合施設。)では、SDGsという言葉が誕生する以前より、『菜の花エコプロジェクト』という地球にやさしいエコな取り組みを連携しながら取り組んでいます。

洲本の特性・強みを活かした菜の花エコプロジェクトの具体的な取組内容やプロジェクト開始の経緯などについてお聞かせください。

細川さん:菜の花エコプロジェクトを一言でいうと、菜の花を核とした地域資源を活用した再生可能なエネルギーを生産する循環型の地球環境にやさしい取り組みです。洲本市では2002年からこのプロジェクトをスタートさせました。

具体的なプロジェクトの流れとしては、主に4つの工程で構成されています。
①菜の花の種まき【9月~10月】
 市が農家さんに無料で菜の花の種(菜種)を配布します。その後、農家さんは畑や耕作放棄地に播種し、菜の花を育てていただきます。

②菜の花の収穫【5月下旬~6月】
 菜の花の収穫に必要な大型コンバインは市が用意し、オペレーターによる収穫作業を行います。収穫された菜種は、搾油施設のあるウェルネスパーク五色に運搬します。

③搾油、商品化
 乾燥⇒選別⇒焙煎⇒搾油⇒ろ過の工程を経て、昔ながらの製法で絞った一番搾り油を「菜の花の恵み」という商品名で、各地で販売します。
【200ml:515円、500ml:800円、900ml:1,230円(いずれも税込み。)】
また、搾油の工程で排出される油粕は、肥料や家畜飼料として有効活用します。

④廃食油を回収、軽油代替燃料となるBDF(バイオディーゼル燃料)にリサイクル
 廃食油を分別回収し、BDF精製プラントで軽油の代替燃料であるBDFに再生し、ディーゼル車などに利用しています。

私たち行政と洲本市民の皆さん、農家さんが連携し、洲本市内でこの一連の循環型サイクルが成り立っているところが大きな特徴です。

そして、なぜ“洲本市=菜の花”なのかというと、それは江戸時代後期にまで遡ります。
洲本市五色町都志に生まれ、日露民間外交に偉業を残した郷土の偉人「高田屋嘉兵衛(たかたやかへえ)」。その偉業を顕彰するために1995年に建設されたのがウェルネスパーク五色(正式名称を高田屋嘉兵衛公園といいます。)で、その年に彼が生前愛したとされる菜の花をウェルネスパーク五色の周辺に咲かせようと栽培したのが菜の花エコプロジェクトのきっかけです。

収穫風景
収穫された菜種
ウェルネスパーク五色にある搾油施設
搾油(ろ過)
「菜の花の恵み」
左から900ml、500ml、200ml

菜の花と子供たちの笑顔が満開!20万本の菜の花で作る『巨大菜の花迷路』

上空から見た『菜の花迷路』

例年、菜の花が満開となる3月下旬から4月上旬にかけて、菜の花の栽培が特に盛んな洲本市大野地区にて、大野菜の花まつりが開催されています。当初は耕作放棄地対策の一環として菜の花を栽培しはじめましたが、今では地元住民の方々をまきこんだ地域活性化に寄与する春の便りを告げるイベントの一つになっています。

細川さん2015年以降、洲本市大野地区に住む農家さんたちが組織化している「大野菜の花部会」のメンバーが中心となって、菜の花の迷路を作っています。2,000㎡の畑に20万本の菜の花が咲き、全長350mの巨大な迷路を楽しむことができます。

2023年は3月26日(日)から4月9日(日)までの15日間にわたり開催され、淡路島の内外から、家族連れを中心として約4,300人の方々に訪れていただきました。入場料は無料で、「菜の花の恵み」を使用して揚げたフライドポテトの無料ふるまいも実施するなど、お客様に楽しんでいただけるよう農家さんたちが知恵を絞ってくれています。

菜の花エコプロジェクトから派生して、このようなイベントを農家さん主導で行ってくれていることは、我々行政にとっても大変心強いです。

菜の花を教材にした『環境学習』

環境学習の様子

菜の花エコプロジェクトは、地球環境を考えるための身近な教材としても大変有効です。

洲本市では、次代を担う子供たちに豊かな環境を残せるよう、環境学習の推進にも取り組んでいます。

細川さん私が講師となって、市内の小学3年生の児童を対象に菜の花エコプロジェクトの学習を授業の一環として行っています。収穫風景を見てもらい、その後搾油施設の見学、「菜の花の恵み」を使ったドレッシング作りなどを体験してもらっています。菜の花から油ができる工程を学び、実際に搾油する機械を目の前で見ることができるとあって、子供たちはほんとに興味津々です。

最後に細川さんから一言

細川さん皆さんお気づきのとおり、菜の花エコプロジェクトは洲本市の歴史から誕生し、現在に至るまで継承されている官民連携の事業であり、2009年には経済産業省資源エネルギー庁より「次世代エネルギーパーク洲本」の指定も受けました。また、偶然が必然かは分かりませんが、私自身、高田屋嘉兵衛さんと同じ集落の出身なので、特別なご縁を感じながら日々業務に取り組んでいます。洲本市にしかない特色を生かしたこのプロジェクトを次世代に伝え、さらに発展させていくことができるよう取り組んでいきたいと思いますので、来年の菜の花の開花の時期には皆さんぜひお越しください!

一覧に戻る