移住したいけど希望する仕事が見つかるか不安…。
今の仕事と同じ業種に就職しても、給与を含む勤務条件、地域性や人間関係などの環境が変わるので、これまでどおり働けるか心配…と悩む方が多くいらっしゃいます。
そこで今回は、兵庫県外から洲本市のホテルに転職した藤本雄大さん・圭奈子さん夫妻に、地元企業への就職についてインタビューしました。
【藤本圭奈子さんの子育て、ハローワーク洲本の仕事探しについての記事もあわせてご覧ください。】
お二人の出会いは職場でした。雄大さんが勤務するホテルにアルバイトで働いていた学生の圭奈子さん。そこで交際が始まるも職場が変わり遠距離恋愛をすることに。その状況から一緒に洲本市へ移住することになりますが、そのきっかけは圭奈子さんでした。
圭奈子さんが就職活動で参加した合同企業説明会。そこで淡路島のホテルグループから話を聞き、洲本での就職と移住を決めました。圭奈子さんから「淡路島のホテルから内定をもらった」と報告を受けた雄大さんは、同じグループのホテルにすぐ問い合わせたところ、まだ求人募集をしていたため、その場で転職を決意したそうです。
なぜ洲本で就職したのでしょうか。同じ業種でも地域差はあるのでしょうか。
その点を詳しく聞いてみました。
−圭奈子さんが洲本で働くと決めた理由は何ですか。
圭奈子さん:以前から海がみえる場所で働きたいと思っていました。説明会に行った後、バイト先の先輩に淡路島で働きたいと話したところ、洲本なら私のやりたいことができると教えてもらい、それが決め手で働くことを決めました。
−洲本がどんな場所か知っていましたか。
圭奈子さん:一度も行ったことがなく、全く知りませんでした。ただ、ホテル業界は職場の近くに社員寮があることが多く、洲本のホテルもそうでした。ですから、とりあえず住んでみようと思いました。
【備考】移住相談窓口では、移住前の仕事探しと住まい探し、どちらを先に探すべきかとよく聞かれます。 結論から言うと、どちらも並行して探すことをオススメします。藤本さんのように、寮に入って住み込みで働ける仕事もありますし、面接で知り合った企業の方々から物件を紹介された方もいらっしゃいます。物件探しだけ先行した場合、淡路島も広いので通勤時間や移動手段から、勤務地が限定されてしまいます。 ただ、どうしても就きたい仕事、住みたい場所がある場合は別です。まずは移住で何を重視するのか決めることが大切です。
−雄大さんは今まで全国各地のホテルで勤務されていますが、洲本のホテルとの違いはありますか。
雄大さん:正直なところ、給与や勤務体系に大きな違いはありません。ただ、ホテルのある立地は様々です。ホテル以外に何もなく、コンビニまで車で1時間かかる場所に勤めたこともありました。それと比べて洲本は市街地にホテルがあり、地元の方も生活しやすいほどよい観光地なので、とても暮らしやすいです。
「プライベートだけでなく仕事のモチベーションも上がりました」と雄大さんは続けます。
雄大さん:ホテルで調理師をしていますが、淡路島の豊富でかつ新鮮な食材を使って調理できることは特別です。肉、魚、野菜とどれも美味しいので、調理する側もモチベーションが上がりますし、お客様に自信をもって提供できます。
野菜は毎朝、地元農家さんがホテルへ直接届けてくださいます。農家さんの顔を思い浮かべながら厨房に立っているので、地域のために頑張ろうという想いが湧いてきて、新たなやり甲斐を感じています。
と、笑顔で語る雄大さん。お話しを伺っているだけで、仕事への情熱が伝わってきます。
【備考】藤本夫妻の勤務先は、「地産地消に拘った食材を活用することで地域活性化を図るとともに、フードマイレージと食品ロスを削減」する取組を行っています。このような取組が評価され、 兵庫県が県下企業によるSDGsに関する取組みを評価・認証するために創設した制度「ひょうご産業SDGs認証事業」において、宣言企業1124社の中で僅か6社のみ選出(宿泊業界では1社のみ)される「ゴールドステージ」企業として認証されました。 ※宣言企業及びゴールドステージ認証企業数は、2023年12月時点の数字です。
取材後に勤務先へお邪魔し、写真撮影をさせていただきました。急きょお邪魔したにもかかわらず、快く撮影許可をいただきました。お子さんと育休中の圭奈子さんにも撮影に同行していただいたので、事務室では子育ての話題で持ち切り。藤本夫妻は同僚の皆さんと和気あいあいとお話しされていました。とても明るい職場という印象でした。
そこで少し気になり、こんな質問をしてみました。
−素敵な職場で働きやすそうに感じました。このホテルは違うかもしれませんが、宿泊業界は全体的に離職率が高いです。退職する方が多い理由は何だと思いますか。仕事が大変だからでしょうか。
雄大さん:仕事が大変だとは思いません。コロナ禍以降に働き方改革が進んで、労働環境が改善されました。今は残業もありません。給与・待遇も悪くないので、退職する理由はほかにあると思います。
「理由は様々です」としつつ、逆に退職せずに続けられる理由を教えてくださいました。
雄大さん:従業員のほとんどが、地元出身者ではなく移住者です。何も知らずに働きはじめますが、どんな場所かを知って、地域で楽しみを見つけた方は仕事が長続きします。休日に趣味の釣りを楽しむとか、その土地だからできることを見つけてほしいと思います。
また、同僚が辞めるとなると、一緒に遊ぶ相手がいなくなるので「じゃあ、私も辞めよう」と、ドミノ倒しで退職することが多いです。職場以外で共通の趣味をもつ友人がいれば、ドミノ倒しは起きないと思います。これから移住する方は、地域で知り合いや相談できる相手をつくってください。
こう話す藤本夫妻も、淡路島のお店・観光スポットめぐりや自然のなかでの子育てなど、“ここだからできること”を目一杯楽しんでいるご様子でした。実際に楽しみを続けることによって、淡路島をPRする仲間や子育て仲間ができているようです。